滝野店の中村です。
前回に引き続き今回は「天編」です。
前回ご紹介した明王グループだけでなく「天」もまた煩悩を切り捨てる武闘派集団です。
「天」とは聞きなれない言葉かもしれませんが、寅さんで有名な柴又の帝釈天や毘沙門天、東大寺の南大門の金剛力士像も天の一員です。
見た目のとおり仏教界のガードマンの役割ですが、明王と何が違うのでしょうか?
実は「天」は仏教界の一員ではありません。
「天」とはサンスクリット語(古代インド語)で「神」という意味の「デーヴァ」からきています。
仏教が広まる前のインドではヒンドゥー教という多神教が信仰されていました。
その中には最強の戦士と言われている「インドラ」という神や宇宙を作った創造神「ブラフマン」など多彩な神様がいます。
それがインドラは帝釈天、ブラフマンは梵天として仏教に取り入れられていきました。
元々いた仏教の神様を仏教を護るガードマンとして取り入れたのです。
いわば野球でいう助っ人外国人のようなものでした。
元々はインドの神様だった天は、多彩で様々な姿をしていたので、菩薩や如来より身近で親しみやすかったそうです。
例えば天の最高ランクに位置づけされるものは「四天王」と呼ばれます。
北は多聞天、西は広目天、南は増長天、東は持国天。東西南北に別れ如来・菩薩を守ると言われています。
甲冑に身を包み、四者四様で思い思いの恰好をしている自由さが人気の理由だそうです。
他にも足の速さを形容する韋駄天、死者の罪悪を裁く閻魔様も天の一員です。
天はしばしば四天王のように複数でユニットを組みます。
この天とこの天を組み合わせて1つのユニットを作るというように、まるで今のアイドルグループのように様々なユニットを作っていったそうです。
また、多聞天のように「武士の間ですごく人気が出ている!」となれば時にはソロデビューもします。それが上杉謙信で有名な「毘沙門天」です。
時には「毘沙門天」は「弁財天」、「大黒天」とユニットを組み、日本の神様と一緒になって「七福神」として定着したりしました。
このようにその土地、その時代に合わせ救いの形を進化させ日本の民衆に愛されてきた仏像。
願いの数だけ仏像が欲しい。そんな人間の御利益主義が多種多様な仏像を生んできました。